
東京港区の麻布十番で、8月23日(土)と24日(日)の2日間にわたって麻布十番納涼まつり2025(主催:麻布十番商店街振興組合)が開催され、ザ・ライブリー東京麻布十番も一昨年と昨年に引き続き、露店を出店した。

麻布十番納涼まつりは、麻布十番商店街振興組合が主催し、主にその組合員らが屋台の設営からそこでの販売までを請け負う手づくりのイベント。今やこの地域の夏の風物詩として広く知られている。今年も組合に加盟している100以上の飲食店や団体が、十番大通りや雑式通りなどに沿って網目状に露店を連ね、腕をふるった。その中には、麻布エリア近郊に根城を構える外国公館や新進気鋭のインフルエンサーが手掛ける割烹、230年以上の歴史を誇る老舗の蕎麦屋などもあり、まさに綯(な)い交ぜ状態。通りの各所に割り当てられた地方自治体(またその役所)の物産展には、全国各地の名産品が並び、ある人には故郷の味を、またある人には旅心地の高揚感を届けた。
戦後の区画整理事業の残余地を多目的広場として整備した「パティオ十番」には野外ステージが設けられ、地元の小学生らがジャズを演奏したり、有名演歌歌手が生歌唱を披露したりして、まつりに彩りを添えた。また、そこから更に渋谷側に進んだところにある網代公園には、射的やヨーヨー釣りなどが楽しめる「ふれあい子どもコーナー」が設営され、多くの家族連れで賑わった。
屋台の串焼きは完売御礼
ホテル2階ラウンジ利用は280人超

ライブリー東京麻布十番が納涼まつりに参加したのは今年で3回目。ホテルが開業した翌年(2020年)と翌々年(2021年)は、コロナ禍でイベント自体が中止になりデビューが遅れたが、今年は過去2回の経験を踏まえて、新たな取り組みも実施した。
今年の露店の目玉商品は、串打ちした肉と野菜を網焼きした2種類のブロシェット―――――脂気や血なまぐさを中和し、旨味を引き出すレモンで味付けされた牛たん串と、シャープな甘みの中にスモーキーな薫りが漂うバーベキュー味のラム串でまつりに臨んだ。同じ屋台で出していたオリジナルドリンク<アールグレイハイボール>との相性も良く、酒のアテとしては申し分ない味加減。いずれの串も、肉とパプリカ、シシトウガラシが交互に串に刺されていて、ジャンキーさの中にもヘルシーさが織り込まれている。肉は、ボリューム感が損なわれないように、豪快な厚切り。食事としても楽しめるように、レシピや切り方には幾度も改良を重ねた。その甲斐あってか、ブロシェットは1日目・2日目ともに完売。名店ひしめく美食の街で確かな存在感を示した。

また今年は、まつりの来訪客に向けてホテル2階のラウンジを開放。猛暑と人いきれの中を練り歩く人々が、涼をとり、一息つけるようにと導入した新たな試みだ。ライブリーの出店で食べ物か飲み物を購入した人にはリストバンドを配布し、以降自由にラウンジに出入りできるようにした。


ラウンジのバーカウンターには、オレンジとグレープフルーツの生搾りサワーや柚子ソーダなど、階下で出しているものとは違ったラインナップのドリンクを揃えた。ウォークインの来場者も、そのいずれかを購入すれば、屋台での購入者と同様にラウンジで時間を過ごすことができる。まつりの期間に宿泊していたゲストには、ひとり1杯無料でドリンクを提供した。

さらに、まつりが行われた2日間は、午後3時から屋台の撤収作業が始まる午後9時まで、DJがライブパフォーマンスを披露。スピーカーからは、ラウンジにいる人々を非日常の昂奮から醒めさせないアップテンポな楽曲が絶え間なく流れた。

ラウンジを利用した人は、宿泊しているゲストを含めると、2日間で計約280人。延々と続く麻布十番大通りの中腹で、雑踏を抜け出し、汗が引くのを待ちながらその後の計画を立てられる数少ない場所として好評を得た。ホテルの、失われつつある「街のランドマーク」としての役割を恢復(かいふく)させることは、ライブリーのブランドコンセプトの柱の一つであり、ラウンジの開放は、2026年度のまつりでも実施する予定だ。

私たちにとっての納涼まつり

ライブリーホテルズは、その理念のひとつとして、各ホテルが根を下ろす諸地域と積極的に交流を図ることを掲げている。その意味で、ザ・ライブリー東京麻布十番にとって納涼まつりは、麻布十番という街の鼓動と一体になることができる年に一度のチャンスだ―――。

「麻布十番納涼まつり」という名称が使われるようになったのは1960年代の中頃。「麻布十番納涼大会」などのその前身となるイベントを含めれば、この地域で行われてきた夏祭りの歴史は、江戸時代にまで遡るという。もともとは近隣の住民が集まるような小ぢんまりとした行事だったが、約30カ国の大使館の協力のもと開かれた国際バザールや、岐阜県飛騨市河合村の雪を真夏の都心に運び込む雪まつりなど、企画性に富んだ催事が話題を呼んだ。こうした試みが縮減した今でも、2日間の訪問者数は約30万人と、都内有数の規模を誇る。
麻布十番商店街は、高度経済成長に伴って都電が廃止されてから、急速な都市化を遂げる六本木を傍目に、交通の便が悪く四方を山の手台地に囲まれた「陸の孤島」として、長い間不遇を味わってきた。2000年に念願かなって地下鉄2線が開通すると、今度は反対に下町風情が損なわれてしまうのでは、という懸念の声があがった。納涼まつりは、そうした背景に抗して、町の知名度向上を図りながら、一方で昔ながらの「超近隣型商店街」という文化の継承を目指した奮闘の軌跡の象徴―――いわば河川のようなものだ。その歴史に、新たな支流としてそそぎ、地域共同体の一員として与(くみ)することができるというのは、実に得難い経験。ザ・ライブリー東京麻布十番は、今後の納涼まつりでも(そしてまつりがないときも)、自らの役割を模索し続け、この街にとって欠かせない存在になることを目指します。