人数は大人の人数のみカウントしてください。
検索ボタンを押すと宿泊予約サイトに移行します。(移行に3秒程度かかる場合があります。)

ホテルのコーヒーを、“おまけ”で終わらせない。“その人の一杯”をつくるバリスタ・大貫さん

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
BEHIND THE EXPERIENCE #01 
LIVELY HOTELSの企画者インタビュー
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ホテルのコーヒーを、“おまけ”で終わらせない。

“その人の一杯”をつくるバリスタ・大貫さん

LIVELY HOTELSの中で、ホテルの体験をつくる人に会いに行き、その人ならではのこだわりや、表からは見えない裏話を聞くインタビュー連載「BEHIND THE EXPERIENCE」。

第一回は、HOTEL GRAPHY 渋谷のGraphic Grill & Barで働くバリスタ・大貫さんを訪ねました。

ホテルのコーヒーと聞くと、宿泊や食事に添えられた“脇役”のような一杯を思い浮かべる人もいるかもしれません。正直、私も取材前はそんなイメージを持っていました。

おいしいコーヒーを提供するだけではなく、会話まで含めて一杯を楽しんでもらう。
ホテルの中で、そんなコーヒー文化を育てようとしている大貫さんに、そのこだわりと情熱を聞いてきました。


「僕も、ホテルのコーヒーはおまけになっているところがほとんどだなって」

塩崎 ちょっと正直に聞いてもいいですか。ホテルのカフェで出てくるコーヒーって、どうしてもおまけっぽいイメージがあって。苦いだけのコーヒーが高い値段で出てくる、みたいな。

大貫さん わかります。僕も同じだったかもしれないです。

塩崎 え、大貫さんもですか(笑)。

大貫さん 正直、ちょっと高いだけ高くて、そんなに美味しいかな、って。

なんとホテルのバリスタ本人がそのイメージを認めてくる展開は想定外。

塩崎 じゃあここのは、何が違うんですか?

大貫さん ホテルのカフェって、ボタン一つで出てくるフルオートのマシンを使ってるところが多いんです。
でもうちはセミオートで、本当に人の手で入れるエスプレッソと、ハンドドリップ。豆も蔵前にあるスペシャルティコーヒー専門店・SOL’S COFFEEさんから仕入れていて、開業のときからそこはちゃんとやりたい、っていう方針でした。

効率重視の手早く簡単にボタン一つで提供されるコーヒーではなく、人の手で入れるセミオート。
しかもコーヒー豆は、スペシャルティコーヒー専門店から仕入れているというこだわり……。
とりあえずある “メニューの一つ”ではなくて、カウンター越しの会話まで含めた、ひとつの楽しみとしてちゃんと扱われている。これもライフスタイルホテルならではの、滞在時間をちょっと豊かにする工夫なのかもしれない。

同じ豆で、毎日違う味を実験し続けた日々

塩崎 そもそも大貫さんって、コーヒーどれくらいマニアなんですか?

大貫さん 当時、家の近くにスペシャルティコーヒーの豆屋さんがあって、たまたま淹れてみたら、めちゃめちゃ美味しくて。そこからもっと知りたくなって、本を読み漁って。温度、抽出時間、豆の挽き目を変えると味が変わるって書いてあったから、毎日違う淹れ方で試してました。

塩崎 毎日ですか!

大貫さん 毎日ですね。同じ豆を買ってきて、今日は温度高めで、明日は抽出長めで、って。

塩崎 ……なんか、聞いてるだけでちょっとやばいですね(笑)。

大貫さん やばいですかね(笑)。

この時点ですでに大貫さんの底知れぬ好奇心とオタク気質を感じる。
美味しいコーヒーが好き!の趣味の域を完全に超えて、コーヒーの味わいを探究する実験を自宅でひたすらやっていた大貫さん。

塩崎 スクールにも通ったんですか?

大貫さん 1年通って、日本バリスタ協会のライセンスを取りました。でも卒業してすぐ転職できたわけじゃなくて、当時サラリーマンをしながら、仕事終わりにイタリア料理屋でダブルワークしてました。週2回、夕方から深夜までとか。

塩崎 深夜まで平日にダブルワーク!相当な情熱がないとなかなかこなせないハードワークですね。

大貫さん 今思うとちょっとやりすぎたかもですね(笑)。

本格的にコーヒーの道に進むことを決めてサラリーマンからバリスタへ、大きな人生のキャリアチェンジを叶えた大貫さん。彼の淹れてくれるコーヒーが美味しいのは、コーヒーと向き合い続けるひたむきな情熱という隠し味が隠れているから。

イタリアには「ミオバール」という文化がある

塩崎 ここって海外のお客さんもすごく多いですよね。

大貫さん ホテル併設で、ゲストの9割が海外の方なので。海外の方って、皆さん自分のコーヒーの飲み方のスタイルを持ってるんですよね。
2〜3週間滞在される方だと、初回に好みを聞いて、次の日からはもう言われる前に作る関係になっていったりして。最終的には名前で呼び合うような仲にまでなったりします。

塩崎 もはやバーテンダーのマスター的な(笑)。

大貫さん イタリアに「ミオバール」っていう文化があるんですよ。”私のいつものカフェ”って意味なんですけど、バリスタがそのお客さんに合わせたドリンクを作るんです。
例えばカプチーノだと、温度、泡の量、エスプレッソの濃度、全部その人仕様にします。同じカプチーノでも”この人のカプチーノ”みたいな感じです。

塩崎 いいですね、それ。大貫さん、実はイタリアも行かれたんですよね?

大貫さん スクールに通ってた時に、1週間ぐらい滞在しました。簡単な旅行みたいなものでしたけど、カフェ文化を見てきた感じですね。

塩崎 イタリア人は出勤前、立ち飲みでエスプレッソだけサクッとオーダーみたいなのも聞いたことあります。

大貫さん まさにそんな感じで。あとカプチーノって、イタリアでは正午前までしか飲まないみたいなんですよ。午後に頼むとちょっと失礼にあたるとか。

塩崎 えっ、そうなんですか!

大貫さん なんででしょうね(笑)。マナーみたいなことらしいですけど。そういうのを見てきて、日本のホテルのカフェバーでも、”その人のコーヒー”みたいなものが入れられるようになっていきたいなと思っています。

確かに、バーに行けば「ハイボール、濃いめで」とか「お酒感強くなくて甘めのやつでお願いできますか」なんて自分の好みを伝えるのは当たり前。でも、カフェで同じことをやったことは、ないかもしれない。
目の前に本格バリスタがいるなら、コーヒーだって好みを伝えてもいいはずなのに、どこか遠慮していた自分がいる。
大貫さんは、こういうオーダーをむしろ喜んでくれるらしい。
コーヒー時間をもっと楽しめるtipsを与えてもらった気がする。

「コーヒー感強めだけどマイルドなラテで」って、頼んでみた

というわけで、早速私も海外ゲストのように、遠慮なく自分の好みを大貫さんに伝えてみることにした。

「エスプレッソ強めで、でもミルクたっぷりが好きです。」

そんな雑なオーダーでも、大貫さんは笑顔でカウンターに立ってくれる。
ここのバーカウンターがちょうどいい距離感で、こっちも遠慮なく話しかけられる。
「今の気分だったら、ちょっとエスプレッソ深めで、ミルクは温度低めがいいかもですね」なんて話しながら手際よく手を動かしている姿を目の前で見れるのも楽しい。
今回は「リストレッド」という抽出方法でカフェラテを作ってくれた。新しい飲み方や新しい自分の好みに気づく楽しさを引き出してくれる大貫さん。

豆の時点で、桃の香りをまとっている

大貫さんは、1〜2ヶ月に一度、シーズナルのノンアルコールドリンクも開発している。

大貫さん 7〜8月は「トリプルレイヤーピーチコーヒー」っていう、3層のドリンクを提供しています。一番下が白桃ウーロン茶とハイビスカスのゼリー、真ん中が白桃ウーロン茶とピーチ・ライチのシロップ、上にピーチフレーバーのコーヒーをのせています。

塩崎 白桃ウーロン茶って初めて聞きました。

大貫さん 中国のお茶で、本当に桃の香りがするんですよ。ゼリーとシロップの両方に使ってて、飲み進めても桃の香りがずっと続くようにしてます。

塩崎 ちなみにピーチフレーバーのコーヒーって、シロップですか?

大貫さん シロップじゃないんです。コーヒーって、生産国で「精製」っていう加工工程があるんですけど、そこでフルーツの酵母を入れて発酵させると、豆そのものが桃の香りをまとうんですよ。フレーバーを足すんじゃなくて、豆の段階でもう桃。それをのせて、3層全部桃、みたいな一杯にしました。

塩崎 こういうアイデア、どうやって考えてるんですか?

大貫さん パクリも3つ掛け合わせるとオリジナルになると思っていて。パクれるものをどれだけ仕入れられるか、そこも努力だと思っていています。ドリンク作ってる時間が、一番楽しいかもしれないですね。

トリプルレイヤーピーチコーヒーを実際に飲んでみたら、想像を超えた美味しさだった。
桃とコーヒーってそもそもこんなに合うんだ、ということへの発見と、その爽やかさな後味に驚いた。
ほのかに甘みを感じながら、下のゼリーの食感を含めて飽きることなく最後まで楽しめる。
夏にぴったりすぎて、あっという間に飲み干してしまった。

「これはちょっと行きすぎじゃない?」——1万円の金属ボール

シーズナルドリンクの話をしていたら、大貫さんが急にニヤッと笑いながら言い出した。

大貫さん これちょっとやりすぎじゃない?って気がする器具があるんですよ。

塩崎 え、なんですか。

大貫さん 金属のボールがあるんですよ。球状の。それを冷凍庫でキンキンに冷やしておくんです。サーバー(コーヒーを受ける器)の上にスタンドを置いて、その金属ボールをセットして、その上でドリップする。落ちてきたコーヒーがボールに当たって、冷えた状態でサーバーに落ちるんです。

塩崎 それは何を狙ってるんですか?

大貫さん コーヒーの香りって揮発性なので、急冷することで香りをできるだけ逃さないようにしたいっていう。しかも氷じゃないから、薄まらない。これ1万円くらいするんですよ。

塩崎 え、そこまでの器具があるんですか、この世に。

大貫さん もう、行くところまで行ってる感じで(笑)。

もう完全に、こだわりの次元が違う。でもこれくらい振り切れた人が、目の前でコーヒーを入れてくれるって、めちゃくちゃ贅沢だなと思う。

大貫さん 実はうちのトリプルレイヤーコーヒーも、桃の香りが逃げないように急冷しながら入れてるんですよ。考え方としては同じで。

塩崎 そのマニアックさが、ちゃんと形になってるとはさすがです!(笑)。

「自宅で入れるアイスコーヒーは、お店に勝てる」

大貫さんは月1回、コーヒーワークショップも開催している。
昨年5月から始めて、約1年。累計参加者はもうすぐ100人になる。

大貫さん HOTEL GRAPHY 渋谷って当時まだ全然認知されてなくて。外に発信できるものを増やしたくて、ここでコーヒー淹れてるよ、カフェとしても使えるよっていうのを伝えたくて始めました。

初心者から、大貫さんに鋭い質問を飛ばしてくるマニアまで、いろんな方がやってくるという。
今年1月には渋谷の奥渋エリアにある人気和菓子店「かんたんなゆめ」さんとコラボして、コーヒーと和菓子のペアリングを楽しむ会も開催した。

塩崎 8 、9月はアイスコーヒーの会なんでしたっけ?

大貫さん そうなんです。これ持論なんですけど、自宅で入れるアイスコーヒーってお店に勝てると思ってるんですよ。

塩崎 え、バリスタがそれ言っちゃうんですか!

大貫さん お店ってどうしてもたくさん作って冷蔵庫で保管することが多いんですよ。入れたてのアイスコーヒーやってるお店って、ほぼないんです。でも自宅なら入れたてを急冷して飲めるので、香りとフレッシュさは自宅の方が全然出せるんですよね。

バリスタとして働いていながら、「自宅の方が勝てる」と言い切ってしまう。
この振り切り方が、いかにも大貫さんらしい。コーヒーの面白さそのものを余すことなく伝えたい。
そんなピュアな思いで開催されている大貫さんのクラスはいつも盛り上がっている。

最後に、大貫さんから

インタビューの終わり、大貫さんに「この記事を読んだあと、どのように遊びに来てほしいか」を聞いてみた。

大貫さん コーヒー好きの方はもちろんなんですけど、それにプラスして、このホテル内の非日常な空間でくつろいでいただけたらいいなっていうところを目指してます。堅苦しい場所じゃなくてカジュアルに利用して欲しいですね。

塩崎 オーダーもカスタマイズしていいですか?「甘めで」とか「濃いめで」とか。

大貫さん もちろんです。こんな感じでって言われたら、なんでもやります。
カウンター越しにコーヒーの話とか振られたら、僕本当にずっと喋っちゃうので(笑)。ぜひぜひ。

というわけで、渋谷でちょっと時間ができたら、ぜひHOTEL GRAPHY 渋谷のカフェバーにぜひ立ち寄ってみてほしい。
「甘めで」でも、「今日はこんな気分」でも、なんでもいい。


あなたにぴったりな一杯を提案してくれる大貫さんとの会話ごと、コーヒータイムを楽しんでみてください。
あなたの「ミオバール」として気軽に足を運んでいただけるきっかけになりますように。


今回の舞台となったホテル

HOTEL GRAPHY 渋谷

HOTEL GRAPHY 渋谷は、渋谷・恵比寿・代官山の中間に位置する、LIVELY HOTELSのホステルホテルブランド。ホテルらしい快適性とデザイン性を備えながらホステルを併設し、海外からのバックパッカーをはじめ、多様なゲストが滞在しています。館内には、海外のホステルを思わせる自由でラフな空気が流れています。

Web / Instagram

大貫さんに会える場所

Graphic Grill & Bar(グラフィックグリルアンドバー)

HOTEL GRAPHY 渋谷1階にあるカフェ・ダイニング。
モーニングからバータイムまで営業し、バリスタが淹れるコーヒーのほか、こだわりのグリル料理やカクテルも楽しめます。宿泊者以外の方も気軽に利用できます。

店舗情報
住所|東京都渋谷区東1-29-3 HOTEL GRAPHY 渋谷 1階

アクセス
JR「渋谷」駅新南口から徒歩7分
各線「渋谷」駅C2出口から徒歩9分
各線「恵比寿」駅から徒歩10分
東急東横線「代官山」駅から徒歩11分

営業時間
MORNING 7:00〜10:00
LUNCH 11:00〜15:00
CAFE 15:00〜17:00
DINNER & BAR 17:00〜23:00(L.O. 22:00)

定休日
水曜のランチ・ディナー

お席のご予約はこちら  →公式サイト(レストラン・バー)

7〜8月限定
記事内で紹介した「トリプルレイヤーピーチコーヒー」は、カフェタイムを中心に提供しています。


手ぶらでOK、少人数でじっくり学べるコーヒーワークショップ

大貫さんと楽しむ、月1回のコーヒーワークショップ

初心者の方も歓迎。豆や淹れ方による味の違いを、大貫さんと一緒に楽しみながらしっかり学べます。

次回開催日:8月30日(日)
アイスコーヒーの淹れ方とアレンジコーヒー~ラテベースのお土産付き~


開催場所:Graphic Grill & Bar
詳細・申し込みはPeatixページにて順次公開